マンションやビルに水が届く仕組み、「給水方式」の解説シリーズ第3弾です。
第1回では「高置水槽方式」、第2回では「加圧給水方式(ポンプ直送方式)」を取り上げました。
どちらも一度タンク(受水槽)に水を貯めてから各部屋へ送るという共通点がありましたね。
今回ご紹介する「増圧直結給水方式」は、これらと大きく異なります。
なんと、タンクを一切使わない! 近年の新築マンションや大規模改修で急速に普及しているこの方式、ぜひ一緒に理解していきましょう。
そもそも「直結給水」って何?
まず「直結」という言葉の意味から確認しましょう。
| 方式の分類 | 特徴 |
|---|---|
| 貯水槽水道方式 | 水道本管の水を一度タンクに貯めてから各部屋へ給水 |
| 直結給水方式 | タンクを経由せず、水道本管から直接各部屋へ給水 |
「直結給水方式」はさらに2種類に分かれます。
直結給水方式
→水道管から直接給水
①直圧直結給水方式
②増圧直結給水方式
💡 ポイント
水道本管(道路の下にある太い水道管)だけの水圧では、3〜4階以上には水が届きません。そこで登場するのが「増圧ポンプ(ブースターポンプ)」です!
増圧直結給水方式の仕組みをやさしく解説
ひとことで言うと?
水道本管の水圧 + 増圧ポンプのパワー = 高い階まで直接給水!
仕組みの流れ(ステップで解説)
道路の地下を通っている「配水管(水道本管)」から、そのまま建物内へ水を引き込みます。
受水槽(タンク)を通さない のが最大のポイントです。
住民が蛇口をひねると水圧が下がります。給水管の途中に設置したセンサーが、この圧力低下を自動的に検知します。
センサーの信号を受けて、増圧ポンプ(ブースターポンプ)が起動します。水道本管の水圧に「不足している分のパワー」を上乗せして圧力を高めます。
増圧された水は給水管を通って、10〜15階程度の中高層フロアまで直接届きます。

前回の加圧給水方式との違いを整理すると…
| 比較 | 加圧給水方式 | 増圧直結給水方式 |
|---|---|---|
| 水源 | 受水槽(タンクに一旦貯める) | 水道本管(タンクなし・直結) |
| ポンプの役割 | 受水槽の水を押し上げる | 本管の水圧を増幅させる |
| 水の鮮度 | タンク経由(滞留の可能性あり) | 直結のため常に新鮮 |
| 管理義務 | 受水槽の清掃義務あり | タンク清掃不要 |
増圧直結給水方式のメリット
1. 衛生的でおいしい水が届く
タンクに水を貯めないため、水が滞留して劣化する心配がありません。
水道本管から来た新鮮な水がそのまま蛇口まで直接届きます。
受水槽方式では、タンク内での水の滞留や藻の発生リスクがありましたが、増圧直結方式ではそれが根本的になくなります。
2. 受水槽の清掃・点検が不要になる
受水槽がないため、水道法で義務付けられている年1回の清掃(10トン以上の水槽)が不要になります。
清掃費用・水質検査費用が節約できます。
ただし、増圧ポンプ本体の定期点検は必要です。ポンプのメンテナンスを忘れずに!
3. スペースを有効に活用できる
受水槽・高置水槽など大型タンクが不要になるため、その設置スペースが丸ごと空きます。
空いたスペースを駐車場・駐輪場・倉庫などに活用できるのは大きなメリットです。
4. 省エネ効果が高い
水道本管の水圧を有効活用し、不足している分だけポンプで補います。
常にフル稼働するわけではないため、電気代を最小限に抑えられます。
5. 停電時でも低層階は水が使える
停電によって増圧ポンプが止まっても、水道本管の直圧(自然水圧)が生きていれば低層階(1〜2階相当)の給水は継続可能です。
加圧給水方式と比べて、停電時の対応でやや有利な面があります。
増圧直結給水方式のデメリット
1. 停電時は高層階に水が届かなくなる
最大の弱点は停電への対応です。
増圧ポンプが電力で動くため、停電するとポンプが停止し、高層階への給水が止まります。
| 方式 | 停電時の状況 |
|---|---|
| 高置水槽方式 | タンクの残水で一定時間は給水可能 |
| 加圧給水方式 | 受水槽の水はあるが、ポンプ停止で給水不可 |
| 増圧直結給水方式 | 低層階は本管直圧で継続可・高層階は停止 |
非常用電源(自家発電設備)を設置すれば停電時も継続して給水できます。
防災対策として導入を検討しましょう。
2. 断水すると水が一切使えない
受水槽がない(=水を貯めていない)ため、断水が発生すると即座に水が使えなくなります。
災害時の備えとして、各家庭での飲料水備蓄(1人3日分=9L以上)が特に重要です。
3. 導入に条件がある(水道局の審査が必要)
増圧直結給水方式を導入するには、以下の条件をクリアする必要があります。
- 前面道路の水道本管の口径が基準以上であること
- 配水管の最小動水圧が一定以上(0.15MPa以上など)確保されていること
- 所轄の水道局に事前協議・申請を行うこと
地域の水道事情によっては導入できないケースもあります。事前確認が必須です。
4. 増圧ポンプの維持管理は必要
受水槽が不要になる一方で、増圧ポンプの定期点検・メンテナンスは継続して必要です。
ポンプの耐用年数は一般的に15〜20年程度とされており、老朽化したら交換が必要です。
5. 超高層建物には単独では対応できない
一般的な増圧直結給水方式で対応できるのは15階建て(約50m)程度まで。
それ以上の超高層ビル・タワーマンションでは、増圧ポンプを多段(直列)に設置する方式や、他の方式との組み合わせが必要になります。
まとめ:3つの給水方式を比較してみよう
| 比較項目 | 高置水槽方式① | 加圧給水方式② | 増圧直結給水方式③ |
|---|---|---|---|
| タンクの有無 | 受水槽+高置水槽 | 受水槽あり | なし |
| 水の衛生面 | タンク清掃必要 | タンク清掃必要 | 常に新鮮 |
| 省スペース | ❌ 大きなスペース必要 | △ 受水槽スペース必要 | ✅ 最もコンパクト |
| 省エネ | △ 揚水の電力が必要 | △ 常時加圧で電力大 | ✅ 必要な分だけ |
| 停電時 | ✅ タンク残水で対応可 | ❌ 停止 | △ 低層階のみ可能 |
| 断水時 | ✅ タンク残水で対応可 | ✅ タンク残水で対応可 | ❌ 即座に停止 |
| メンテナンス | タンク清掃義務 | タンク清掃義務 | タンク清掃不要(ポンプ点検は必要) |
| 主な対象建物 | 中高層・病院など | 中規模マンション | 近年の新築・改修マンション |
🔍 どんな建物に向いている?
- 新築の中高層マンション(10〜15階程度)
- 既存マンションの受水槽老朽化に伴う設備改修
- 衛生面を重視したい施設
- スペースを有効活用したいビル・マンション
- ランニングコスト(清掃費・水質検査費)を削減したい
導入が難しいケース
- 水道本管の口径・水圧が不十分な地域
- 超高層タワーマンション(単独では不可・多段階方式)
- 断水リスクへの備えを重視する施設(病院など)
防災の視点から見た増圧直結給水方式
特に注目したいのは災害時のリスクです。
増圧直結給水方式は衛生面・省コスト・省スペースの点で優れていますが、貯水がないという特性上、災害時の給水途絶リスクは他の方式より高くなります。
対策ポイント
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 家庭での備蓄 | 1人あたり最低3日分(9L)の飲料水を備蓄 |
| 非常用電源の整備 | 自家発電設備があれば停電時もポンプ稼働可能 |
| 増圧ポンプの定期点検 | 非常時に確実に動作するよう日常点検を徹底 |
| 防災用貯水タンクの設置 | 別途、防災用の貯水槽・蓄水タンクを設置する選択肢も |
建物設備の給水方式を把握しておくことは、防災対策の基本です。あなたの建物はどの方式か、ぜひ確認してみてください!
最後に
今回は「増圧直結給水方式」についてやさしく解説しました。改めてポイントを振り返りましょう。
増圧直結給水方式 3つの核心ポイント
- タンクなし!
→ 水道本管から直結で給水するため、タンクの清掃・管理が不要 - 水が新鮮!
→ タンクに滞留しないので、常に衛生的な水を使える - 省エネ!
→ 必要な分だけポンプが動くため、エネルギー効率が高い
一方で、停電・断水時のリスクは意識しておく必要があります。
設備の特性を正しく理解して、適切な防災対策を合わせて行うことが大切です。
TAFURI防災では、「設備を知ること=防災の第一歩」という考えのもと、こうした解説記事を発信し続けています。



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