給水方式の基本①:高架水槽方式をやさしく解説

マンションやビルに住んでいると、蛇口をひねれば当たり前のように水が出てきます。

でも、その水がどうやって各部屋まで届いているか、考えたことはありますか?

実は、建物の種類や規模によって「給水の仕組み」はさまざま。

今回は、長年にわたってマンション・ビル・病院・学校などで広く使われてきた「高架水槽方式」について、初心者の方にもわかりやすく解説します。

目次

そもそも「受水槽方式」って何?

まず、給水方式の全体像を整理しましょう。

建物への給水方式は、大きく 2種類 に分かれます。

2つの給水方式

  • 直結給水方式
    →水道管から直接給水
    1-1:直圧直結給水方式
    1-2:増圧直結給水方式
  • 受水槽方式
    → 一旦タンクに水を貯めてから給水
    2-1:加圧給水方式
    2-2:高架水槽方式(今回のテーマ)

受水槽方式とは、水道本管から引き込んだ水を、まず建物の地下や1階付近にある受水槽(タンク)に一旦貯めてから、各部屋へ供給する方式です。

受水槽(じゅすいそう)とは?
建物の地下や地上低層部に設置された大きな貯水タンクのこと。
水道水をいったん蓄えておく「水の貯金箱」のような役割を果たします。

今回のテーマ!高架水槽方式の仕組みをわかりやすく解説

高架水槽方式の最大の特徴は、「重力(自然流下)」を利用して水を届ける仕組みです。

水が届くまでの3ステップ

STEP
水道本管 → 受水槽へ

水道局の水道本管から引き込んだ水を、建物の地下や1階付近にある受水槽に貯めます。

STEP
受水槽 → 揚水ポンプ → 高架水槽(屋上)へ

受水槽に貯まった水を、揚水ポンプ(水を汲み上げるポンプ)を使って、受水槽から建物の屋上に設置された高架水槽まで汲み上げます。

揚水ポンプ(ようすいポンプ)とは?
水を低い場所から高い場所へ運ぶためのポンプ。電気モーターで動きます。受水槽から高架水槽まで水を運ぶ役割を果たします。

STEP
高架水槽 → 重力で各部屋へ

屋上の高架水槽に貯まった水が、重力(自然に落ちる力)=自然流下を利用して、上から下へと各フロア・各部屋に流れていきます。ポンプを使わず、自然の重力だけで水が届く仕組みです。

STEP
高架水槽の水が減ると自動で受水槽から補給される

屋上の高架水槽内の水位が一定の量まで下がると、自動的に揚水ポンプが起動し、受水槽から高架水槽へ水が汲み上げられます。

水位が規定量まで回復するとポンプは自動で停止します。この水位センサーによる自動制御のおかげで、住人が意識しなくても常に高架水槽に水が確保された状態が保たれます。

高架水槽方式の「メリット」

メリット① 高層階にも安定して給水できる

揚水ポンプで屋上まで水をくみ上げるため、5階・10階・それ以上の高層階にも問題なく水を供給できます。

直結給水方式だけでは水圧が足りない高層建物でも対応可能です。

メリット② 水圧が一定で安定している

屋上の高架水槽から重力を使って水を落とすため、水圧が常に一定に保たれます。「朝は水の出が悪い」「シャワーの圧力がバラバラ」といった問題が起きにくく、快適に使えます。

メリット③ 停電時でも水が使える

揚水ポンプが止まって新たなくみ上げができなくなっても、すでに高架水槽に貯まっている水は重力で流れ続けます。そのため、停電が起きてもしばらくの間は各部屋で水を使うことができます


メリット④ 災害時に強い(二重の貯水)

受水槽と高架水槽の2箇所に水が貯まっているため、断水が発生しても残量分は水を使い続けられます。

その間に対策を立てることができるため、BCP(事業継続計画)対応が必要な病院・学校・避難施設などに特に有効です。

BCP(ビジネス継続計画)とは?
災害や緊急事態が発生したときでも、重要な業務を継続・早期回復できるよう事前に備えておく計画のこと。

メリット⑤ 運用中の電気代を抑えられる

揚水ポンプは「水が必要な量だけ使った分だけ」くみ上げる仕組みのため、無駄な電力消費を抑えることができます

加圧給水ポンプを常時稼働させる方式に比べてランニングコストが低い点もメリットです。

高架水槽方式の「デメリット」

デメリット① 設置コストが高い

受水槽と高架水槽の2つを設置する必要があるため、初期費用が他の給水方式と比べて高くなりやすいです。

さらに受水槽から高架水槽まで繋ぐ配管も長くなるため、工事費全体がかさみます。

デメリット② 広いスペースが必要

受水槽を設置する地下・低層スペースに加え、屋上にも高架水槽の設置スペースが必要です。

設置スペースの観点では、給水方式の中で最も不利とされています。また、屋上のタンクは建物の外観にも影響するため、景観への配慮も求められます。

デメリット③ 定期的なメンテナンスが必要

水道法により、年に1回の貯水槽清掃が義務付けられています。

水槽本体の清掃だけでなく、揚水ポンプやバルブなどの周辺設備の点検も必要です。清掃・点検にかかる費用は、マンションであれば管理費に含まれることが一般的です。

デメリット④ 水質管理に注意が必要

受水槽と高架水槽の2段階にわたって水を貯留するため、適切な管理を怠ると水質が悪化するリスクがあります。

清掃・点検を怠れば、藻や雑菌が発生する可能性も。定期的な水質管理が不可欠です。

メンテナンスについて知っておこう

高架水槽方式を安全に使い続けるには、定期的なメンテナンスが欠かせません

法律で定められた義務

項目内容
年1回の清掃水道法により義務付け。全ての貯水槽が対象
簡易水道検査貯水量が10トン以上の水槽は清掃に加えて水質検査が必要
周辺設備の点検揚水ポンプ・バルブ・配管なども定期的に点検が必要

🔍 メンテナンスでチェックすること

  • 受水槽・高架水槽の内部清掃(汚れ・藻・雑菌の除去)
  • 揚水ポンプの動作確認・オイル交換
  • バルブ・配管の劣化・漏水チェック
  • 水質検査(色・臭い・濁りなど)

専門業者への依頼がおすすめ

清掃・点検は専門知識が必要な作業です。

年1回のメンテナンス義務をうっかり忘れてしまわないよう、専門業者と継続契約しておくと安心です。チェック漏れを防ぎ、建物全体の安全を守ることができます。

まとめ

項目内容
方式の仕組み受水槽 → 揚水ポンプで汲み上げ → 高架水槽(屋上)→ 重力で各部屋へ
主な対象建物マンション・オフィスビル・病院・学校・避難施設など
メリット高層階対応 / 水圧安定 / 停電時対応 / 災害に強い / 電気代節約
デメリット初期コスト高 / スペース必要 / メンテナンス必要 / 水質管理が必要
メンテナンス義務年1回の清掃(水道法) / 10トン以上は水質検査も必要
特に向いている建物BCP対応が求められる施設・高層建物

高架水槽方式は、「受水槽に貯めた水を揚水ポンプで屋上の高架水槽まで汲み上げ、重力で各部屋に届ける」というシンプルな原理をもとに、長年にわたって私たちの生活を支えてきた信頼性の高い給水方式です。

一方で、設置コストやメンテナンスの手間といった課題もあります。

建物の管理者・オーナーはもちろん、マンションの住民や施設の利用者も、自分が使っている水がどのように届いているかを知っておくことはとても大切です。

いざ災害や停電が起きたとき、「今の建物の給水方式は何か?どれくらい水が備蓄されているか?」を把握しているだけで、初動対応が大きく変わります。

TAFURI防災では、こうした普段は見えにくい建物設備の知識も含め、日常からできる防災・備えの情報を発信していきます。ぜひ他の記事もご覧ください!

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