熱感知器・煙感知器・炎感知器:仕組みと用途を徹底解説!

目次

はじめに:感知器って何のためにある?

建物に設置されている「自動火災報知設備(自火報)」は、火災をいち早く検知して警報を鳴らすためのシステムです。そのシステムの「目」として活躍しているのが感知器です。

感知器の役割はひとことで言えば、「火災の予兆をとらえて受信機に信号を送ること」

火災が発生すると、必ずいくつかの「変化」が起きます。

火災による変化対応する感知器
🌡️ 温度が上がる熱感知器
💨 煙が出る煙感知器
🔥 炎が出る炎感知器

この3種類の感知器は、それぞれまったく異なる原理で火災を検知します。

それぞれを順番に見ていきましょう。

第1章:熱感知器

熱感知器とは?

熱感知器は、周囲の温度変化を感知して作動する感知器です。

最も普及率が高く、一般のオフィスや廊下などでよく見かける、白い丸いドーム型のものが代表的です。

大きく分けると

  • 差動式(温度の差を感知)
  • 定温式(一定の温度で感知)

の2種類があります。

🔵 差動式スポット型感知器

仕組み

「差動(さどう)」とは「温度の差(変化の速さ)」を感知するという意味です。

具体的には、急激な温度上昇が起きたときに反応します。

仕組みをざっくり説明すると以下の通りです。

  • 感知器内部には空気で満たされた小さな「エアチャンバー」がある
  • 火災発生 → 周囲の温度が急上昇
  • チャンバー内の空気が膨張し、ダイアフラム(薄い金属膜)を押す
  • 接点が閉じて受信機に信号を送る

ただし、「リーク孔(穴)」が設けてあるのがポイントです。

緩やかな温度上昇(例:夏の暑い日)の場合は、膨張した空気がこの穴から外へ逃げるため、誤作動しない仕組みになっています。

🔥 急激な温度上昇 → 空気が急激に膨張 → リーク孔が追いつかない → 接点ON → 火災信号!
☀️ ゆっくりした温度上昇 → 空気が膨張 → リーク孔から逃がす → 接点OFF → 誤作動しない

主な設置場所

差動式は比較的早く反応できる反面、急激な温度変化がある環境では誤作動しやすいため、調理場・浴室・脱衣所などは避けて設置します。

リビング・廊下・事務室・倉庫などが主な設置場所です。

誤作動の原因

原因説明
🍲 直下でのガス調理鍋の湯気が感知器を熱して誤作動させる
💧 湿気・漏水感知器裏側に水分が入り込み接点を短絡させる
💥 物理的衝撃ドーム部分を物でぶつけると膨張同様の変形が起きる

🔴 定温式スポット型感知器

仕組み

「定温(ていおん)」とは「一定の温度になったら反応する」という意味です。

感知器の内部にあるバイメタル(2枚の異なる金属板を重ねたもの)が熱によって変形し、接点を閉じることで信号を発します。

バイメタルとは…
膨張率の違う2種類の金属を貼り合わせたもの。温度が上がると、膨張しやすい金属の側に曲がる性質があります。この「たわみ」を利用して接点を押します。

一般的な動作温度は60℃〜70℃に設定されています。特種・1種・2種で異なります。

🌡️ 温度が設定値(例:60℃)に達する → バイメタルが変形 → 接点ON → 火災信号!

主な設置場所

定温式は「いつも高温になりやすい場所」に適しています。

差動式では蒸気や急激な温度変化で誤作動しやすいため、以下の場所では定温式を使います。

  • キッチン(台所)
  • 脱衣所・浴室付近
  • 押入れ・クローゼット
  • 厨房・ボイラー室

誤作動の原因

定温式の誤作動は差動式に比べて少なめですが、物をぶつけてバイメタル部分が変形することが主な原因です。

ドアの開け閉めが激しい場所では注意が必要です。

🟡 差動式分布型感知器(空気管式)

スポット型ではなく、細い銅管(空気管)を天井に這わせて広い範囲をカバーするタイプもあります。倉庫や工場など広大なフロアに使われますが、設置・維持管理に専門的な知識が必要です。

引用:能見防災

🔥熱感知器 まとめ比較

項目差動式スポット型定温式スポット型
感知原理温度の上昇スピード一定温度(60〜70℃)到達
主要設置場所廊下・事務室・居室台所・脱衣所・押入れ
誤作動リスクやや高い(急激な温度変化に弱い)低め(一定温度に達しないと反応しない)
反応速度速い遅め

💨 第2章:煙感知器

煙感知器とは?

煙感知器は、空気中の煙の粒子をとらえて火災を検知する感知器です。熱感知器よりも早い段階(炎が上がる前の燻焼段階)で火災を感知できるのが最大のメリットです。

現在、主流となっているのは光電式(こうでんしき)です。

🟢 光電式スポット型感知器

仕組み

「光電式」とは「光を使って煙を検知する方式」です。

  • 感知器の内部では、常に一方向に光(赤外線LED)が照射されている
  • 煙が入っていない通常時 → 光は一直線に進み、受光部には届かない
  • 火災発生 → 煙が内部に流入 → 光が煙の粒子に当たって乱反射する
  • 散乱した光が受光部(フォトダイオード)に届く → 火災信号!

まるで「懐中電灯で暗闇を照らしたとき、霧の中では光が散乱して見える」現象と同じ原理です。

感知器の外側には小さな網目(スクリーン)があり、虫やほこりが大量に入り込まないようになっています。

主な設置場所

煙感知器は「火災の初期段階で煙が上がる場所」に特に有効です。

  • 寝室・廊下・ロビー
  • 階段室・エレベーター機械室
  • 電算機室・電気室(精密機器の多い場所)
  • 天井高が低い場所(4m未満)では特に有効

誤作動の原因

原因説明
🚬 タバコの煙煙を本物の火災と誤認することがある
🍳 調理の煙・湯気無窓階の飲食店などでは特に注意
🌫️ ほこりの侵入経年劣化で網目から侵入したほこりが風で舞い上がり反応
🚿 水蒸気加湿器や湯気が多い場所では誤動作しやすい

🟢 光電式分離型感知器

仕組み

スポット型が「1点で煙を感知」するのに対し、分離型は「2点間の空間を煙が遮ったとき」に感知します。

  • 送光部(A地点) から常に目に見えない光ビームを発射
  • 受光部(B地点) が光を受け続けている
  • 火災発生 → 煙が光ビームを遮断(減光)する
  • 受光部が「光が弱くなった!」と検知 → 火災信号!

廊下のような細長い空間や、天井が高くて1点では感知しにくい場所で活躍します。送光部〜受光部の間は最大100mまで対応できます。

誤作動の原因

原因説明
🔧 経年劣化送光部の光が弱くなったり受光部の感度が落ちる
🌍 地震送光部・受光部の位置関係がずれて光軸がズレる
🌫️ 塵・水蒸気の蓄積受光量が徐々に低下して誤作動トリガーになる

⚠️ イオン化式スポット型感知器(現在は廃止)

かつては光電式と並んでよく使われていましたが、放射性物質(アメリシウム241)を内部に使用しているため、環境や人体への影響が問題視されました。

現在は新規設置が事実上なくなり、既設品も順次取り外されています。

☢️ 廃棄は一般ゴミ不可! イオン化式感知器を取り外した際はメーカーへ返却するか、適切な産業廃棄物として処分が必要です。

💨 煙感知器 まとめ比較

項目光電式スポット型光電式分離型
感知の仕組み煙による光の乱反射煙による光ビームの遮断
感知範囲一点集中(半径数十cm)送光〜受光間(最大100m)
主な設置場所廊下・居室・電算機室廊下・アトリウム・長い空間
誤作動要因タバコ・ほこり・湯気経年劣化・地震・軸ずれ

🔥 第3章:炎感知器

炎感知器とは?

炎感知器は、炎が放射する「光のエネルギー(紫外線・赤外線)」を直接とらえて火災を検知する感知器です。

熱や煙では反応しにくい「天井が非常に高い空間」「換気が激しい場所」で活躍します。

見た目が特徴的で、ドーム型の熱感知器や煙感知器とは大きく異なり、カメラやセンサーのような箱型の形状をしています。

光の種類をおさらい

炎感知器を理解するために、まず「光の種類」を押さえましょう。

【電磁波の波長イメージ】

短い波長 ←━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━→ 長い波長

紫外線(UV)| 可視光線(人の目に見える光)| 赤外線(IR)
            青 ← → 赤

私たちが目で見える光(可視光線)の外側に、「紫外線(波長が短い)」「赤外線(波長が長い)」があります。物が燃えるとき、これらが大量に放射されます。

🔵 紫外線式スポット型感知器

仕組み

炎から発生する紫外線(UV)の変化量が一定以上になったとき、火災信号を発します。

  • 炎が発生 → 大量の紫外線を放射
  • 感知器内の紫外線検知素子(UVトロン管など)が紫外線を受ける
  • 受光量の変化が設定値を超える → 火災信号!

反応速度が非常に速く、爆発的な燃焼(フラッシュファイア)にも素早く対応できるメリットがあります。

注意点

太陽光にも紫外線が含まれているため、直射日光の当たる場所への設置は厳禁です。また、溶接作業の火花(アークフラッシュ)にも反応するため、工場での設置場所は慎重に選ぶ必要があります。

🔴 赤外線式スポット型感知器

仕組み

炎から発生する赤外線(IR)のちらつきと特定波長を検知して反応します。

物が燃えるとき、炎は揺れてちらつきます。

このとき、4.4μm(マイクロメートル)付近の赤外線(CO₂共鳴放射)が1〜15Hzの周期でちらつくという、燃焼時にしか現れない独特のパターンが発生します。

赤外線式感知器はこの「CO₂共鳴放射+ちらつき」を捉えることで、誤作動を大幅に減らしています。

一般の高温物体(電灯・暖房機器など)もある程度赤外線を放射しますが、「4.4μmのCO₂共鳴放射」+「1〜15Hzのちらつき」の組み合わせは、燃焼中の炎にしか見られない固有の特徴です。

🏢 炎感知器の設置場所

炎感知器が活躍するのは、熱感知器・煙感知器では対応が難しい場所です。

一般的な設置基準:天井高20m以上の空間

天井が20m以上もあると、火災が発生しても熱や煙が感知器に到達するまでに大変な時間がかかります。しかし炎感知器は「炎から直接放射される光」をキャッチするため、距離の影響を受けにくいのが特長です。

設置場所の例理由
大規模な体育館・アトリウム天井高が20m以上
劇場・映画館の客席上部同上
道路トンネル換気が激しく煙が拡散しやすい
大型倉庫・工場天井高・換気の問題
商業施設のトイレ(一部)縦の空間で煙が拡散しにくく、放火検知目的

⚠️ 炎感知器の誤作動事例

事例①:水たまりに反射した太陽光で誤作動

直射日光が当たらないよう設置していたにもかかわらず、雨上がりの晴れた日だけ誤作動が続く現場がありました。調査の結果、床の水たまりに反射した太陽光の紫外線・赤外線が感知器に届いていたことが原因と判明。

これは見落としやすいレアケースですが、炎感知器の設置場所を検討する際には「光の反射経路」まで考慮する必要があります。

事例②:溶接作業による誤作動(紫外線式)アーク溶接が行われている工場では、溶接の火花から大量の紫外線が放射されます。紫外線式感知器が設置されている場合、溶接作業中に誤作動することがあります。このような場所では赤外線式の方が適切です。

🔥 炎感知器 まとめ比較

項目紫外線式赤外線式
感知対象炎の紫外線炎の赤外線(CO₂共鳴放射+ちらつき)
反応速度非常に速い速い
誤作動要因直射日光・溶接アーク・紫外線ランプ高温物体(一部)・強い赤外線源
特徴爆発的燃焼に強い誤作動に強い(燃焼特有パターン検出)
主な設置場所天井高20m以上・トンネル・倉庫同左(特に日光の影響を受けやすい場所)

📊 3種類の感知器 最終まとめ比較表

比較項目🌡️ 熱感知器💨 煙感知器🔥 炎感知器
感知するもの温度変化煙の粒子炎の光(紫外線・赤外線)
反応のタイミング火災中盤(炎が広がった後)火災初期(燻焼段階)炎が見えた瞬間
得意な環境低い天井・普通の部屋天井4m未満・電気室天井20m以上・トンネル
苦手な環境台所・浴室付近(差動式)喫煙所・調理場(スポット)直射日光・溶接現場(紫外線式)
設置コスト安い中程度高い
感度低め高い非常に高い

🎓 まとめ:感知器選びのポイント

「どの感知器を選べばいいか?」は設置環境によって変わります。

  • 普通の部屋・廊下
    → 差動式スポット型熱感知器
  • 台所・浴室・脱衣所
    → 定温式スポット型熱感知器
  • 寝室・電算機室
    → 光電式スポット型煙感知器
  • 長い廊下・大空間
    → 光電式分離型煙感知器
  • 超高天井・トンネル
    → 炎感知器(赤外線式または紫外線式)

防災設備の施工には消防設備士甲種4類の資格が必要です。

感知器の選定は、消防法の設置基準を熟知した有資格者に相談しましょう。

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