給水方式の基本②:加圧給水方式をやさしく解説

前回の記事では、「高架水槽方式(高置水槽方式)」 をご紹介しました。

屋上にタンクを設置し、重力の力で水を各部屋に届けるというシンプルで信頼性の高い仕組みでしたね。

今回は、同じ「受水槽方式」の仲間でありながら、全く異なるアプローチで水を届ける 「加圧給水方式(ポンプ直送方式)」 を解説します。

屋上にタンクが見えない現代的なマンションやビルの多くは、実はこの方式を採用しています。「屋上のタンクがないのに、なぜ上の階まで水が出るの?」という疑問を、この記事でスッキリ解決しましょう。

目次

加圧給水方式ってどんな方式?

まず、給水方式全体の中での位置づけを確認しましょう。

2つの給水方式

  • 直結給水方式
    →水道管から直接給水
    1-1:直圧直結給水方式
    1-2:増圧直結給水方式
  • 受水槽方式
    → 一旦タンクに水を貯めてから給水
    2-1:加圧給水方式(今回のテーマ)
    2-2:高架水槽方式

一言でいうと?
「受水槽に貯めた水を、ポンプの力で直接各部屋へ圧送する方式」です。

前回の高架水槽方式が「重力を使って水を届ける」方式だったのに対し、加圧給水方式は「ポンプの水圧で水を押し上げる」方式です。屋上に高架水槽を設置する必要がないのが最大の特徴です。

加圧給水方式の仕組みをステップで解説

仕組みのカギは「自動感知・自動制御」するポンプです。

STEP
水道本管から受水槽へ

道路の下を通っている水道本管から引き込んだ水を、建物の地下や地上に設置された「受水槽」に一時的に貯めます。

ここまでは高架水槽方式とまったく同じです。

STEP
センサーが水の使用を瞬時に感知

蛇口を開くと、配管内の「圧力センサー」または「流量センサー」が水の使用を瞬時に感知します。

センサーが感知すると自動でポンプが起動し、蛇口を閉めると自動で停止します。

住人が何も操作しなくても、使うときだけ動く賢い仕組みです。

圧力センサーとは?
配管の中の「水の圧力」を常時監視している機器。蛇口が開かれると管内の圧力が下がるため、その変化を感知してポンプを起動させます。

STEP
加圧給水ポンプユニットが水を圧送

ポンプが受水槽の水を吸い上げ、強い圧力をかけて各階・各部屋へ直接送水します。高架水槽を経由せず、ポンプの力だけでダイレクトに届けます。

また、インバーター制御により、水の使用量に応じてポンプの出力を自動調整するため、各階での水圧ムラが少なく快適な給水を維持します。

インバーター制御とは?
モーターの回転数を細かく調整する技術。水の使用量が少ないときはゆっくり、多いときは速く回転させることで、常に安定した水圧を保ちつつ電力の無駄も削減できます。

STEP
各階・各部屋へ給水完了

ポンプの圧力だけで最上階まで水が届きます。高架水槽という「中継地点」がない分、よりシンプルな経路で各部屋に水が供給されます。

加圧給水ポンプユニットの3つの運転方式

加圧給水方式の心臓部は「加圧給水ポンプユニット」です。

これは「ポンプ+圧力タンク+制御装置」が一体になったコンパクトな設備で、運転方式によって3種類に分かれます。

単独運転

項目内容
ポンプ台数1台
特徴シンプルな構成で導入コストが低い
向いている建物比較的小規模な建物
注意点故障時のバックアップがないため、冗長性は低め

交互運転

項目内容
ポンプ台数2台(交互に動作)
特徴一方が故障しても、もう1台が自動で単独稼働に切り替わる
向いている建物中規模〜大規模建物
注意点給水停止リスクが低く、安定性が高い

交互並列運転

項目内容
ポンプ台数2台(状況に応じて1台または2台同時稼働)
特徴通常は交互運転、需要が急増したとき2台同時稼働に自動切替
向いている建物水を大量使用する大型施設・ホテル・病院など
注意点ピーク時の水量変化にも柔軟に対応できる最上位構成

加圧給水方式の「メリット」

メリット① 屋上に高架水槽が不要

高架水槽方式では必須だった屋上の大型タンクが不要です。そのため、

  • 屋上スペースを駐車場・緑化・機器設置などに有効活用できる
  • 重量物がなくなるため、耐震面でも有利に働く
  • 建物の外観・景観を損なわない

現代の新築マンションで採用率が高い理由のひとつです。

メリット② 省スペース・コンパクトな設備

加圧給水ポンプユニットはコンパクトで、機械室や地下スペースに収まる小型設備です。建物全体の設計自由度が上がります。

メリット③ インバーター制御で水圧が安定

使用量に応じてポンプの出力が自動調整されるため、各階での水圧ムラが少なく、1階でも最上階でも快適な水圧を維持できます。

メリット④ 高架水槽の設置・維持コストが不要

屋上タンクがない分、

  • 高架水槽の設置工事費が不要
  • 高架水槽の年次清掃・点検費用が不要
  • トータルの維持管理コストを削減できる

加圧給水方式の「デメリット」

デメリット① 停電時は給水できない

加圧給水方式の最大の弱点です。

ポンプは電気で動くため、停電するとポンプが停止し、水が出なくなります。

高架水槽方式では屋上タンクに残った水を重力で使い続けられましたが、加圧給水方式にはその「貯え」がありません。

防災上の注意点
大規模地震などで長期停電が発生した場合、受水槽に水は残っていても取り出す手段が限られます。日ごろから飲料水の備蓄(1人あたり3日分・1日3L目安)を心がけましょう。

デメリット② ポンプの定期メンテナンスが必要

ポンプは機械部品のため、定期的な点検・整備が必要です。

  • 経年劣化によるポンプ交換が発生する
  • 故障時は専門業者の対応が必要
  • 修理期間中は給水が制限される場合がある

専門業者との保守契約を事前に締結しておくと安心です。

デメリット③ 受水槽の清掃・管理義務は引き続き必要

高架水槽はなくなりますが、受水槽は残ります

そのため、

  • 水道法により10㎥超の受水槽は年1回の清掃が義務
  • 定期的な水質検査・点検も引き続き必要
  • 高架水槽方式と比べてメンテナンス対象は減るが、完全にゼロにはならない

高架水槽方式との比較表

高架水槽方式との違いを比較してみました。

比較項目🏗️ 高架水槽方式(前回)⚙️ 加圧給水方式(今回)
給水の力重力(自然流下)ポンプの圧力
屋上の設備高架水槽が必要不要
停電時の給水✅ タンク内の水で一時可能❌ 基本的に不可
水圧の安定性○ 階によりやや差あり◎ インバーター制御で安定
維持管理対象受水槽+高架水槽の両方受水槽+ポンプユニット
主な対象建物高層・大規模建物中規模マンション・ビル
設置コストやや高め(2つの水槽が必要)やや安い(高架水槽不要)
外観への影響屋上にタンクが見えるタンクなし・すっきり

まとめ

項目内容
方式の仕組み受水槽 → センサー感知 → ポンプ圧送 → 各部屋へ
別名ポンプ直送方式・タンクレスブースター方式
主な対象建物中規模マンション・オフィスビル・商業施設
メリット省スペース・美観・水圧安定・維持コスト削減
デメリット停電時給水不可・ポンプ定期メンテが必要
メンテナンス義務受水槽の年1回清掃(水道法)+ポンプ定期点検

加圧給水方式は「ポンプの力で水を届ける」現代的な給水方式です。

屋上タンクが不要でコンパクト・省スペースな反面、電気(ポンプ)に依存しているという特性があります。

高架水槽方式と加圧給水方式、それぞれに長所・短所があります。

どちらの方式が良い・悪いではなく、建物の規模や用途、防災上の要件に応じて使い分けられていることを覚えておきましょう。

自分が住むマンションや働くビルがどちらの方式を採用しているかを知っておくことは、停電・断水時の初動対応に大きく役立ちます ぜひ、管理組合や施設担当者に確認してみてください。

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